緊急予備資金とは、予定外の出来事のために取り分けておくお金です。失業、待てない車の修理、医療費、真冬に壊れる給湯器。その価値はすべて「必要なときに手をつけられる状態で、他の用途には使われていない」ことから来ています。だからこそ、ふだんの貯蓄と混ぜておくと、気づかないうちに目減りしていきます。

いちばんよく見る助言は「生活費の3〜6か月分」でしょう。出発点としては妥当ですが、そのまま受け取るとほとんど役に立ちません。誰の支出なのか、どの支出なのか、そしてなぜ上限が下限の2倍も開いているのかを何も語っていないからです。ここでは、それを自分の状況で意味を持つ数字に変える手順を説明します。

収入ではなく、必需支出から始める

いちばん多い間違いは、手取り収入を基準に金額を決めることです。緊急予備資金は収入を置き換えるためのものではなく、収入が途切れているあいだ生活を回し続けるためのものです。この二つは別の数字で、たいてい後者のほうがずっと小さくなります。

来月どうしても支払いを止められないものだけを合計してください。

  • 家賃または住宅ローン
  • 光熱費:電気、水道、ガス、携帯、インターネット
  • 食料品(理想の金額ではなく、実際の金額)
  • 保険料
  • 借入の最低返済額
  • 通勤に必要な交通費
  • 保育費用(やめると働けなくなる場合)

外食、サブスク、旅行、贈り物など、本当の緊急時なら最初の1週間で削るものは意識的に外します。ここで出た数字が重要で、多くの世帯では通常の月間支出の半分から3分の2あたりに収まります。

月の必需支出が20万円なら、3か月分は60万円、6か月分は120万円です。この差は「3〜6か月」がひとつの目標ではないと言えるほど大きく、実際にはかなり性格の違う二つの目標です。どちらの端を狙うのかが、本当の意思決定になります。

3か月に近づく条件と、6か月に近づく条件

幅があるのは、適切な金額が「収入が途切れる可能性の高さ」と「途切れたときの長さ」で決まるからです。大まかに言えば、収入が安定していて替えが利くなら下限側、そのどちらでもないなら上限側です。

少なめでよい理由:

  • 採用が安定している業界での、安定した給与所得
  • 世帯に収入が二つある(とくに関連のない業種であればなお良い)
  • 収入に対して固定費が低く、削る余地がある
  • 実際に頼れる支えがある:家族の援助、退職金や失業給付

多めにすべき理由:

  • 自営業、フリーランス、歩合制、季節労働
  • ひとつの収入で複数人を支えている
  • 専門性が高く、同等の仕事を見つけるのに数か月かかる職種
  • 扶養家族がいる、または継続的な医療費のかかる人が世帯にいる
  • 賃貸ではなく持ち家である(修繕費が自分に来るため)
  • 保障が途切れると深刻になる健康上の事情

住宅ローンと子ども二人を抱えたフリーランスと、共働き世帯の賃貸暮らしの給与所得者とでは、置かれた状況が本当に違います。両者が同じ金額を目標にするほうがむしろ不自然です。

最初の目標は3か月分ではない

ゼロの状態から120万円を見つめるのは気が滅入りますし、自分で信じられない目標は積み立てが止まる目標です。それぞれ単独で意味のある段階に分けたほうが、はるかに実用的です。

  • 3万〜5万円。 ふつうの「まさか」の大半をカバーします。タイヤ、スマホ、保険の自己負担分。何より、小さな問題がカードの残高に変わるのを止める緩衝材になります。
  • 必需支出の1か月分。 給与の遅れや入金の遅れが、危機ではなく面倒事で済むようになります。
  • 3か月分。 本当の意味での余裕。収入が安定している世帯なら、ここを一区切りにするのは理にかなっています。
  • 6か月分以上。 収入が変動する場合や、替えの利きにくい仕事の場合は、ここまで積む価値があります。

最初の数万円が、全体の中で不釣り合いなほど大きな仕事をします。いちばんよくある緊急事態は失業ではなく、「予定していなかった月に降ってくる4万円の出費」だからです。

どこに置くか

原則は、増やすことより引き出しやすさです。緊急予備資金は1〜2日以内に、違約金なしで手元に戻せる必要があります。したがって、期間が固定されるものや、相場の変動にさらされるものは基本的に外れます。相場が下がっているときにこそ必要になるかもしれないお金を、その相場の中に置くべきではありません。

とはいえ、日常の支出に溶け込むほど手軽であってもいけません。ふだん使いの口座とは別の口座に置くだけで、吸収されずに済む程度の摩擦が生まれます。その先の口座の種類や金利は時期によっても国によっても変わるので、記事の経験則よりも、ファイナンシャルプランナーに相談すべき話です。

緊急予備資金と借入返済、どちらが先か

これは繰り返し出てくる質問で、よく取られる中間策は「まず小さな初期バッファを作り、次に金利の高い借入を叩き、そのあと戻って予備資金を仕上げる」という順序です。理由は単純で、バッファがまったくない状態だと次の緊急時にカードを使うことになり、せっかく進めた返済が帳消しになるからです。走っているのにその場から動けない状態になります。そこまで来たときにどの残高から叩くかは別の問題で、スノーボール法とアバランチ法のガイドで扱っています。

使うことは失敗ではない

最後にはっきり言っておきたいことがあります。本物の緊急事態で予備資金を使うのは、計画が壊れたのではなく、資金が機能したということです。進捗を失ったように感じて、積み直しをやめてしまう人がいます。あなたは貯めていたものをそのまま買ったのです——危機に陥らずに済むという結果を。また埋めて、続けてください。

これは一般的な情報であり、個別の目標額ではありません。 あなたにとって妥当な金額は、具体的な支出、収入の安定性、リスク許容度によって変わります。金額を決めるにはファイナンシャルプランナーに相談するのが確実です。