貯蓄口座がひとつで足りるのは、貯める理由がひとつのあいだだけです。理由が増えた時点で、残高は有益なことを何も語らなくなります。その30万円は緊急予備資金なのか、それとも半分は計画中の旅行のために取ってあるのか、あるいは少しずつ積み上げている頭金なのか。口座はそれを知りませんし、やがてあなたも分からなくなります。

これは目的別積立と呼ばれるもの

使い道がはっきり決まっている支出のために取り分けたお金は、一般に目的別積立と呼ばれます。もとは企業会計の考え方で、負債の償還や設備の入れ替えのために、費用を一度に丸ごと被るのではなく、時間をかけて積み立てておくやり方です。

個人に当てはめると、目的別積立は緊急予備資金のちょうど裏返しです。緊急予備資金は予測できない支出のためのもので、目的別積立は完全に予測できる支出のためのもの。3月の自動車税、6月の保険更新、12月の年末。どちらも貯蓄ですが、答えている問いが違います。それをひとつの残高に混ぜてしまうことが、残高から意味を奪います。

心の中の帳簿という問題

人は自然と頭の中の計算で解決しようとします。「まあ実際のところ、このうち15万円は手をつけられない」というように。けれども心の中の帳簿はもろいものです。調子のいい月に残高全体が余裕に見えてしまうまで、あるいは苦しい月に、別の用途へ静かに取り分けていたお金へ手を伸ばしてしまうまでは持ちます。だめだと告げてくれる明確な線がないからです。

分けると、判断そのものが変わる

貯蓄の目標が分かれていれば——緊急予備資金がひとつの塊、特定の買い物がもうひとつ、より長期の目標が三つ目——「このお金を使っていいか」は判断ではなく単純な確認になります。これはそのお金が向けられていたバケットか、それとも別のものか。毎回自分の暗算を思い出そうとするより、はるかに一貫して決められます。

これがバケットという考え方の背景です。目標ごとに新しい貯蓄口座を作るのではなく、すでにある貯蓄を用途のラベルがついた区画に分けること。そうすれば、それぞれの目標に紐づく数字が常に正確でいられます。